大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(ネ)782号 判決

控訴代理人は主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張(中略)はいずれも原判決事実らん記載のとおりであるからここにこれを引用する。

三、理  由

原審証人平田堅太郎の証言、同証言によつて真正に成立したものと認められる甲第一号証、原審証人大塚志乗の証言及び当審における被控訴人本人尋問の結果をあわせ考えると、被控訴人は浜松電話局第二二四六番電話加入権者であつたところ、訴外日本機工株式会社(以下訴外会社ともいう)の取締役社長であつた大塚志乗は被控訴人と親類関係があり、被控訴人も取締役をしており、右会社の工場の一部が被控訴人方にあつたことなどの事情から、前記電話加入権を訴外会社の利用に供する、いわば被控訴人の右電話を右会社へ貸す契約をして、昭和一九年八月一〇日ごろ加入権者名義を訴外会社に変更し、右会社が利用していたが、実質上の加入権者は被控訴人であることに、訴外会社も被控訴人も了解していたところ、戦災によつて電話設備焼失し終戦後番号は浜松電話局第四〇三九番、加入者は訴外会社として復旧架設されたことが認められる。

被控訴人の有する電話加入権を訴外会社の利用に供するためにした前記の所為の意味を考えてみると、右名義変更当時の制度では、およそ当事者の請求によつて電話加入名義を変更する場合には、当事者間において電話加入権の譲渡をする旨を当該電話取扱局へ表示してその承認を受けなければならないのであつたから前認定のように、本件電話を訴外会社に利用される契約をして加入者名義変更をした以上、当時被控訴人から訴外会社への電話加入権譲渡行為がなされたものと認めるべきである。そしてこの譲渡は前記認定の事実に照して判断すると、被控訴人と前会社と互に通謀してなした虚偽の意思表示からなる行為であると認めるのほかない。

したがつて右譲渡行為は無効であつて、電話加入権は被控訴人から訴外会社へ移転することなく、相変らず被控訴人に属していたのではあるが、右の無効はこれをもつて善意の第三者に対抗し得ないこと、民法第九四条に明かである。

前記の本件電話加入権は昭和二四年七月二日前記会社から控訴人へ加入名義が変更され控訴人はその権利者なることを主張するのであるから、被控訴人が本件電話の権利者であること主張し得るか否は、控訴人が前記法条にいう善意の第三者であるか否によつて定まるのである。よつてこの点について按ずるに、成立に争のない乙第二、三号証、当審における控訴人本人の供述により成立を認める乙第一号証、原審及び当審証人石川ちよ、原審証人石川すみ、佐々清司、当審証人鶴見秀吉、西尾俊一の各証言及び当審における控訴本人の供述を綜合すると、控訴人は織機の附属品であるレースなどの製造販売を営むものであるが、かねてから前記会社に対し、これらの附属品を販売し、昭和二四年二月下旬当時右会社にたいし、金八万円余の売掛残代金債権を有していたところ、控訴人はその頃電話の必要を感じ、これを買入れようと思つて時価をきくと約二万八千円とのことであつたので、この買受代金にあてるため右売掛代金のうち金二万八千円の支払を求めたところ、社長大塚志乗は金銭の都合はつかないが電話ならいくらもあるからさしあげてもよろしいといつて、前記代金債務のうち二万八千円に代えて本件電話加入権を譲渡し、三月二日に控訴人方に架設された、ところが前記会社は、さつそくには名義書換手続をせず、控訴人のたびたびの請求のはてに手続に協力し、同年七月二日控訴人名義に変更された次第であつて、右譲渡の際も名義書換の当時も控訴人は被控訴人と前記会社との間の電話譲渡に前段認定の実情のあることは全然知らなかつたものであることが認められる。

原審及び当審証人大塚志乗、平田堅太郎並びに当審において被控訴本人は、右電話加入権は昭和二四年三月初、被控訴人、控訴人及び大塚志乗の三者面談の上この電話加入権が被控訴人に属するものであることを控訴人に告げて訴外会社から控訴人に転貸したもののように供述するけれども、これらの供述は、前記乙号各証、控訴本人の供述その余の証拠と対照し、信用がおけず、その他本件におけるいかなる証拠によつても前記認定をくつがえすべき証拠はない。

以上のとおり、被控訴人と訴外会社との間の本件加入権についての契約は通謀虚偽意思表示であつて無効ではあるけれども、控訴人はこれについて善意の第三者であるから被控訴人は本件加入権が被控訴人に属することを控訴人にたいして主張し得ないものであり、したがつて、本件請求は理由なしとして棄却すべきものである。

よつてこの請求を認容した原判決の取消を求める本件控訴は理由があるので、民事訴訟法第三八六条第八九条第九六条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 藤江忠二郎 原宸 浅沼武)

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